西出先生のレポートをUPさせて頂きました。

西出先生は今年のハンドセラピィ学会の会長でもあります。


ハンドセラピィに興味がある方は、是非こちらもご覧頂ければ嬉しく思います。


私、ASRIN 石田 も西出先生のこと、尊敬して応援しております!


TFCC損傷に対する装具療法


 

          もり整形外科・リウマチ科クリニック

 


                      西出義明先生

1.はじめに

 

 手関節尺側部痛により難渋する症例は多い。橈尺骨遠位端骨折術後に手関節尺側部痛が出現した症例にcuff型splintを作製し症状が改善したので報告する。



2.評価およびスプリントの選択




手関節尺側部痛の評価については、

ulnocarpal stress testが陽性であり、

尺骨頭と手根骨の間の関節裂隙に強い圧痛があり、

他の疾患の誘発テストが陰性であることを確認する。

1) 2) 


初回評価時に、DRUJと月状骨間に圧痛がある症例にはcuff型スプリント(図1)、


尺骨三角骨間に圧痛がある症例にはulnar gutter型スプリント(図2)を適応している。2)




DRUJと月状骨間に圧痛がある場合は、TFC及びfovea橈側周辺の損傷を疑いcuff型を適応する。尺骨三角骨間に圧痛がある場合には尺骨手根靱帯・ECU腱鞘床などの尺側支持機構の損傷を疑いulnar gutter型スプリントを適応する。

なお、作製前に、cuff型スプリントはDRUJと手根骨の近位列部を、ulnar gutter型スプリントは尺側から手関節軽度屈曲位でOTRが徒手的に固定し、それぞれの肢位で自動運動時痛が軽減するかどうかを確認する。日常生活では、ノブをまわす、タオルしぼり、手をつく、包丁で物を切る、桶でお湯をすくう、ペットボトルを開ける、お釣をもらうなどの具体的な動作時の痛みも評価する。



3.スプリント紹介



Cuff型splintの適応は、橈尺骨遠位端骨折後に,遠位橈尺関節(DRUJ)及び尺骨と月状骨及び三角骨間に圧痛があり、DRUJと手根骨の近位列部をOTRが徒手的に固定(加圧)し運動時・安静時痛が軽減する症例である。


Cuff型splintは遠位橈尺関節(DRUJ)と手根骨近位列に対し橈・尺側より求心性の圧を加えることでDRUJの安定性を得る目的で作製する。


オルフィット(1.6mm)で橈・尺骨茎状突起から手関節近位部まで包み込み、掌側でベルクロにて圧を調整できるようにする(図1)。




4.スプリント作製



材料は熱可塑性プラスチック(オルフィット)

厚さ1.6㎜とベルクロテープを使用している。

おおよそ横20cm、縦6cmの熱可塑性プラスチックで尺側が外側になるようにmoldingする(図3)。



橈・尺骨茎状突起から手関節中枢部までを包み込み、

ベルクロテープで求心性の圧を調節できるようにする。スプリントの橈側の縁は中央ラインをやや越え、尺側の力が加わりやすくする。橈側の縁にベルクロテープを貼る(図4)。



これは皮膚の挟み込みを防ぎ、しっかりと装着できるようにするためである(図5)。

Ulnar gutter型スプリントは、尺側手根伸筋の安静化を目的に作製する。スプリントはそれぞれ8週間以上の装着を指示する。スプリント除去の時期は長い症例で6ヶ月を超えるものもあり評価をしっかりと行う。


靱帯が再生され、支持性が増加するには6ヶ月を要すとの考え方もあり少しずつ痛みが軽減している症例については本人、

主治医と相談し了解が得られれば、6ヶ月以上でも経過をみていきたい。3)




5.橈骨遠位端骨折術後,尺骨茎状突起骨折(保存)で尺側部痛を訴えた1例

1),症例提示 

 

70代,女性.主婦.右利き。

 

診断名 右橈骨遠位端骨折(AO分類A2)尺骨茎状突起骨折(基部水平骨折)。

 

現病歴 自宅で転倒し受傷。橈骨遠位部をlocking plateで固定。術後1.5ヵ月でROMは手関節背屈60°(pain+)掌屈50°、 前腕回内85°回外90°(pain+)と改善していたが手関節尺側部痛が出現した。

 

Ulnocarpal stress test、fovea sign、TFCC stress testは全て陽性であった。


痛みはVASで安静時0、運動時6.1であった。握力は右8kg(pain+)、左13kgと低下がみられた。

仕事では右手での家事が痛みのため不可能であった。

 

 

2),セラピィ


交代浴,手関節ROM Ex. relaxation Ex. grasp Ex. ADL Ex.に加えcuff型splintによるsplint療法を施行した。

Cuff型splintは就寝時以外、可能な限り装着させた。


2週に1回、splintの調整を行った。


3), 結果


Cuff型splintを装着3ヵ月後、ROMは手関節背屈70°掌屈60°、前腕回内85°回外90°、

ulnocarpal stress test、fovea sign、TFCC stress testとも陰性に改善した。


VASも0、握力は右16kg(左18kg)と改善し、ADLは全て可能となった。



6.考察

 

尺骨茎状突起骨折による手関節尺側部痛のsplint療法の報告はほとんどみられない。


柴田ら4)は「TFCCの血行はTFC中央部において無血管野であるがTFC辺縁部の血行は豊富であること」を報告していたが、

安部ら5)は「TFCC実質部は掻爬後も再生する」としている。


Cuff型splintは尺骨手根関節支持組織の炎症部位の安静化を促しTFCC周辺部の修復に働いたと考える。

 

橈骨遠位端骨折に尺骨茎状突起骨折を合併し、術後に尺側部痛が持続する症例へのセラピィにcuff型splintも選択肢のひとつとして示唆された。

 

 

7.文献


1)西出義明: 手関節尺側部痛に対するスポーツ外傷のリハビリテーションとリコンデショニングの実際:投球障害のリハビリテーションとリコンデショニング.文光堂:233-248, 2010.


2) 西出義明ほか: TFCC損傷に対するスプリント療法.日手会誌. 21(4): 359-363, 2004. 


3)西出義明: 関節リウマチにおける手指・手・肘関節に対するスプリント・装具療法-

熱可塑性プラスチックを用いて-. 作業療法ジャーナル.45:1024-1033,2011. 


4)柴田節子ほか: TFCC損傷により生じる手関節痛の診断と治療. 整・災外. 44: 133-143, 2001.


5)安部幸雄ほか:TFCC実質部は掻爬後も再生する. 整形外科と災害外科. 62: 234-236, 2013. 

(2014上肢スプリンティングカンファレンス論文集に掲載)



参考資料

ダウンロード
西出先生の尺側部痛のスポーツ障害に対するリハビリテーションとリコンディショニングの実際
西出先生のご好意にて資料をダウンロード出来るよう致しました。
日々の臨床で使っていただければ幸いです。
niside.pdf
PDFファイル 4.4 MB